北九州小倉の和飾堂店主が綴る日本刀コラムです。日本刀の所持、お手入れ方法、購入方法、鑑定書・偽証書、価格・相場などご参考いただければと思います。

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日本刀コラム

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日本刀の所持について

日本刀の所持について
日本刀は美術品であり、登録証がついていればどなたでも所持ができます。
刀剣店などが販売する刀にはすべて登録証がついていますので安心です。

よく「警察に届け出なければならない」と言われる方もおりますが、まったくの誤解です。
警察に届け出る必要があるのは、旧家の物置や屋根裏から刀が出てきた場合などで、この際は発見届けといって、発見された地域を管轄する警察署の生活安全課に届け出る必要があります。
ほとんどの場合、発見届けという書類を発行してもらえますので、その書類と刀の現物を、県教育委員会が主催する登録審査会で審査してもらい、審査に合格すると、登録証を発行してもらえます。

ここでの審査とは、刀の真贋の審査ではありません。合格基準は、日本古来の鍛法で鍛えた日本刀であるか。またそうであっても刀の機能を失っていないか(例えば、刃がなくなっている、切っ先部分がないなど)だけであり、例え偽名でも登録証は発行されます。
登録証の銘の記載は真贋の保証ではなく、単に「そういう銘がある」ということです。
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日本刀の手入れについて

日本刀の手入れ
日本刀の材料は言わずもがな、鉄であります。
この酸化しやすい材料でできた日本刀がどうして千年も連綿と受け継がれ、今、我々の手にあるのでしょうか?それは刀というものが、平安の昔より、すでに武器という枠を遙かに超越して、日本人の精神の拠り所となっているからであります。またその経済的価値の高さも、それぞれの時代でそれぞれの所有者が、細心の注意を払い、取り扱ってきたからです。

ですから、父の遺品といえども刀に全く興味のない人が持つと、刀の行く末は哀れでありましょう。
刀の数寄者というのは、本当に刀を大事にします。
刀は次から次に数寄者の手に渡っていくことこそが、命を永らえる大きなファクターと申せましょう。

さて、刀の取り扱いと手入れですが、よく時代劇などで刀を鞘から抜かず、鞘の方をおもむろに引き抜くシーンがありますが、刀の取り扱いについて全く無知な演技指導です。
刀は鞘から抜くものです。手入れのときは、刃を上にした状態で静かに抜きます(横にして抜くとヒケの恐れがある)。

油がついている場合はネルなどで拭き取り、打ち粉を打って、きれいなネルで打ち粉を拭き取ります。
月に1回以上、鑑賞してネルで拭くことのできる方は、無理に油をひいておく必要はありません。
鑑賞の間隔が長い方は、油を刀身につけておいてください。
尚、打ち粉、油ともハバキを外して、刀身だけにして手入れを行ってください。
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日本刀の購入方法について

日本刀の購入方法""
日本刀の購入方法は色々ございますが、自分に合っている買い方が一番です。
それぞれ長所短所があります。最近ではネットオ−クションが盛んですが、安く買える代わりに、銘などは目をつぶらなければならないケースはあるでしょう。
しかし、誰にも干渉されずに自分の好きなときに好きなものを買えるというメリットはあります。
信頼のおける刀剣店や実店舗のあるネットショップであれば、偽物を売りつけることはありませんが、それでもやはり刀は初めてという方には、敷居が高いでしょう。
とはいえ、「偽名でも欠陥品でもなんでもいいから、とにかく日本刀がほしい」という場合を除いて、多くの刀剣ファンは正真を持ちたいと願っているはずです。

日本刀の購入方法
反面、残念ながら「浜の真砂は尽きるとも」に匹敵するくらい、偽物が多い世界であることも事実です。そんな中でどうしたら偽物を掴ませられないようにできるかを、次項の「偽物の作り方」とともに述べていきたいと思います。
まず、一般の方が刀をほしいと思ったときに、まずしなければならないことは「掘り出し根性」を捨てるということに尽きます。通常本物なら100万円するものが、50万円であるわけはありません。

偽物を売る方も、100万円を10万円といったら、これは偽物ですよ、と言っているようなものです。しかし100万円が90万円くらいなら割安感もないので、50万円とか60万円とか買い手の心を微妙にくすぐる価格帯を言ってきます。これに乗ったが最後、50万円を捨てたようなものです。
本当の掘り出し物とは、正真を適正価格で買うことなのです。

よく鑑定に持ってきて「信頼できる友人から買った」という方がおられますが、私の経験から言うと、5割はアウトのケースです。これは、なにも売った方の友人に悪意があったわけではなく、その友人が手にいれたときに、すでに偽物を掴まされていたということです。

人間的に信頼できるのと、刀の知識が信頼できるかは、別問題ということです。友人間の売買は、お互い刀について詳しくなかったら、信頼できる鑑定家、刀剣店などに相談して真偽や価格の決定を行った上で、お互いが納得されたら、後々問題も起こらないと思います。
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偽名・偽物について

前述したように、骨董の世界は偽物との戦いともいえます。
偽物を掴んで初めて一人前になれる、と負け惜しみを言う方もおられたり、むしろ偽物との戦いを楽しんでいるような方もおられますが(本当は掘り出し根性が強い人)、偽物など掴まないに越したことはありません。そのためにはそれなりの先輩や、鑑定会、刀剣専門家及び協会が主催するような会に積極的に出向き、1本でも多く、正真品、傑作品を見ておくことが重要です。

偽名・偽物
次に、偽物には時代偽物と近代偽物があります。時代偽物は、刀の製作時期と偽名が打たれた時期が、だいたい同じ旧幕時代であるので、銘の錆色などはそれなりに落ち着いています。
しかし現代と比較して、資料とすべきお手本が少なかったことなどで、銘自体は偽物と看破するのにそれほど苦労ではありません。
やっかいなのは鍛冶平(かじへい)こと細田平次郎直光の偽物です。
彼は、大慶直胤の門人であったので(自身の作刀もあり、それなりに上手)、お手本には事欠かず、それはそれは精巧な銘を切っているため、現代の鑑定家でも即座に見破るのは難しいところです。

偽名・偽物
とはいえ、これも所詮は偽物であり、鍛冶平の手癖というものを勉強すれば、おのずと真偽ははっきりするものです。たとえば、鍛冶平は偽名を切ることに対し、それなりに良心の呵責があったのか、はたまたやむを得ない事情で偽物を作らされていて、それで雇い主に反感を持ってか、それぞれの偽物作品銘に、偽物のサインを送っているということです。例えば、大慶の花押の左の小円になる部分を本物と比較して、かなり小さめに描くといった具合にです。鍛冶平が置かれた当時の環境からして、本物そっくりに銘を切ることはなんでもないことであり、手癖というよりはサインとしかとれない不思議な人物ではあります。鍛冶平が偽名を切った刀工は、幕末の有名刀工のほとんどです。更に虎徹、肥前刀などにもありますので注意が必要です。少しでもおかしいと感じたら、ご相談ください。肥前刀などにおいては、それぞれの代でそれぞれ明確な掟があり、これらを知っておくことも重要ですが、この項では書ききれないので順次アップしていきたいと考えております。また初心者講習といったものや、オンライン鑑定(写真をメールで送ってもらい、それによる鑑定。写真により鑑定のため、最終鑑定にはなりません)を計画しております。

近代偽物は、書物やその他の資料が巷に溢れている時代の偽物であり、銘は鍛冶平に負けないくらい精巧なものがありますが、難点はなんといっても時代の錆がないということでしょう。また鏨枕が立ちすぎていることも特徴です。人工的な錆び付けを施しているので、研ぎ溜まり部分が自然に錆に入っておらず、錆と光っている部分の境が直線的です。

偽名のその他の特徴としては、無銘に銘を切ったものならともかく、刀にあった銘を消して新たに銘を入れた場合は、鎬線が茎の錆のスタート部分でゆがんでいるのが上げられます。こういうものはまず偽名と思って間違いないでしょう。本物は鎬線が刀身から茎の最後まで円弧を描くように自然に流れています。
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鑑定書、偽証書などについて

鑑定書、偽証書等について
刀そのものの偽物とともに、鑑定書の偽物も後を絶ちません。業界の各所も大変憂慮している状況です。
鑑定書、指定書の類は、巷に溢れていますが、要約すると現代の刀剣界は、(財)日本美術刀剣保存協会の保存刀剣鑑定制度で成り立っています(問題がないわけではないが、今のところ一番信頼できるとされている)。

以前は、同協会発行の貴重刀剣、特別貴重刀剣という認定制度でしたが、地方審査の不正が後を絶たなくなったので、本部審査のみの保存刀剣鑑定制度となったわけであります。現在は、保存刀剣鑑定書、特別保存刀剣鑑定書、重要刀剣指定書、特別重要刀剣指定書、国の指定としては、重要美術品(現在は重美制度はない)、重要文化財、国宝です。こういう鑑定書がつくと価格は一気にはねあがる点も、これらの鑑定書や指定書の偽造が一向に減らない理由の1つです。しかし重文や国宝は、所在があきらかですので、さすがにこれらの偽造指定書は滅多にありません(重美は結構あるようです)。

鑑定書、偽証書等について

さて、現代における鑑定書の偽造の方法ですが、偽造鑑定書といっても台紙から偽造するのではなく、本物の鑑定書に偽物の茎写真を貼り替えるだけのものが多いようです。ですから、協会に鑑定書の現物を送ってみてもらえば、当然協会で保管されている台帳の写真と違うわけですから、すぐにばれることではあるのですが、ある程度精巧に写真の貼り替えをやっていれば、「保存神話」でなかなか確認しないのが現状です。

それでは、本物の刀はどうなったのか?ということですが、これは刀が傷まない程度に錆び付かせたりして、発見届けをとり、新たに登録証をもらう。また無銘であれば、登録証がなくなったとかで全国照会にかけてもらい、これまたあらたに登録証をもらって保存鑑定に出す。新たな登録証で保存申請すれば、本物なので新たな保存鑑定書がもらえるということです。その他、輸出の形をとったりすることもありますが、いずれにしても鑑定書の裏に記載されている登録番号と、現状刀の登録番号が違ったりしますので、なるべくこういうものには確信がない限り、手を出さない方が賢明です。
個々のケースでご質問がある場合はお問い合わせフォームよりご質問ください。

現在でも、鍛冶平に負けないような銘切師は実在します。このような偽物に上記のような方法で偽鑑定書を付けた偽物刀が、意外なことに何人ものプロの目をかいくぐって流通することがあります。その要因として考えられるのは、現在の業者の会というのは、スピード命であり、業者から業者に売るときは刀をろくに見もせず、また買う方も然りで、保存鑑定書のみを鵜呑みにして取引するためです。もちろん刀だけを見せられたら、プロですので偽物であることはすぐわかるのですが、先ほどの「保存神話」で目がくらんでしまうのです。

結論から言えば、一般のユーザーが判断することは不可能かも知れません。やはり信頼できる刀剣店で購入するのが一番だと思います。このような店であれば、販売前に十分確認をとっていますし、万が一偽物であることが判明しても必ず引き取ってくれるからです。
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登録証について

登録証について
日本刀の所持について」でも述べましたが、日本刀及び古式銃には必ず登録証が必要です。登録証のないこれらのものを所持したり、売買したりすると銃刀法違反となります。
しかしながら日本刀は皆様の想像以上に身近なものであり、屋根裏から先祖伝来の刀が出てきたという話や、父の遺品で登録証のない刀が出てきたという話は、世の中には少なくありません。この場合は、発見地を管轄する警察署の生活安全課に連絡し、「警察署に持ってきなさい」という指示のもとで、発見刀を発見地の警察署生活安全課に持参いたします。発見場所を警察が確認に行くこともありますが、ほとんどの場合はすぐに発見届けという書類を発行してもらえます。ほとんどの場合と申しましたが、もらえないケ−スもあります。

賢明な読者様はもうおわかりですね?そうです、発見した状況に嘘があると発見届け書類をもらうどころか、逆に大変なことになります。“大変なこと”の意味もわかりますね?とにかく発見したときの状況を、正直に話しさえすれば問題ありません。

さてこの発見届け書類をもらえたら、刀と共に都道府県が主催している刀剣等登録審査会に持って行くことになります。開催日は各県によって違いますが、概ね1ヶ月に1回行わ れています。そこでその刀が真の日本刀であるかどうかが審査され、合格すると登録証がもらえます。不合格ですと警察署に提出しなければなりません。没収という流れになります。但し、その不合格刀に拵えが付いていれば、拵えまで没収されることはありません。
真の日本刀(合格の基準)とは、日本古来の鍛法により鍛えられたものであるか。刀の機能を失っていないか(刃がない、朽込みが激しく刀としての用をなさない)だけであり、これらを満たしていれば、登録証は発行してもらえます。例え再刃や偽名刀であっても登録証は発行され、偽名のままの銘を書いた登録証が発行されます。つまり登録証にある銘文というのは、単にそういう銘が切られているということに過ぎません。年期も同じです。ですからその刀の正真(銘通りの作者が製作したものか?)は、ご自身で研究するか、然るべき鑑定家、鑑定機関に見てもらうしかありません。

登録証について
登録会場でよく問題となるのは、いわゆる軍刀です。太平洋戦争時代は、実際の武器としてのほか、指揮、戦意高揚、武人の誇りなどの意味で、夥しい数の日本刀が要求されましたが、戦場に持って行ける日本刀には、自ずと数に限りがあります。日本刀不足を解消するため、受命刀工制度などで日本刀生産に励んだのですが、刀工一人がトンテンカンと金槌を叩いて作れる日本刀の数は、たかが知れています。所詮は焼け石に水です。
そこで日本刀製作のノウハウがある、岐阜関あたりの伝統工芸が生きてきます。大きな工場で女工さんたちの手で、西洋鉄を材料にした単に日本刀の形に鉄をくり抜いたものを、油焼き入れして日本刀に似たものを生産しました。意味合いはナイフと同じですが、現在でも素人の方だと、日本刀との区別はつかないと思います。その他、満鉄刀(レ−ルなどを材料にした)、スプリング刀、興亜一心刀と色々ありますが、要は日本刀ではありません。逆に審査会とは、これらを合格させないためのものと言えます。ですから前述いたしました通り、これら以外だったらたいていのものは合格させるということです。
しかし、軍刀でも真の日本刀は存在しますので、話はややこしくなります。では審査員というのは、真の日本刀とこれら戦時中に製作された“日本刀もどき”との区別はつくのでしょうか?持ち込まれた審査物は個人の財産とはいえ、不合格となると国家権力に没収されるのですから任務は重大ですが、日本刀の経験が深い“具眼の審査員”なら簡単に判断できます。


登録証について
まず“日本刀もどき”には鍛え肌がまったくありません。日本刀は和鉄を繰り返し、折りたたみ(折り返し)鍛錬をしますから、木の年輪のような鍛え肌が表れます。新々刀などは無地風のものもありますが、これとて立派に鍛えてありますので見えにくいといっても地肌はあります。あとは、茎に桜のマ−クの刻印があるとかで容易に判断できます。業者などが持ち込むものの中には、これらのマ−ク刻印を巧妙に消したものもありますが、無駄なことです。必ずと言っていいほど審査員は見抜きます。あとは参考程度ですが、軍刀拵えに装着されているケ−スが多いということもあります。審査員にとっては素延であることを見抜くのは容易ですが、これを申請者に納得させることの方が難しいようです。なにしろ相手は素人であり、持ち込まれたものはまったく日本刀と同じ形をしているのですから…。

しかし、これら日本刀でない軍刀に本物の登録証が発行されて流通しているケ−スはままあります。登録制度が始まったのは、昭和26年からですが、登録に関する法整備が未成熟の上、戦後間もなかったこともあり、戦地で生死をともにしたと申請者に言われたら、審査員も素延とわかっていても登録証を出すしかなかったでしょう。むしろ、登録制度が始まった大きな理由は、日本の文化遺産である日本刀を占領軍から守ろうとしたことにあります。現在はそういうこともなくなったので、純血種の日本刀のみを残すというスタンスに転換してきました。

登録会場にいくと、今でも軍刀の不合格の場面に出くわします。申請者は悪意のない素人ですので、審査員に向かって、「あんた、なにゆうてまんねん?これは、じいちゃんが満州で生死をともにした刀でっせ?これが日本刀でなくてなんだんねん?あんたにじいちゃんの苦労がわかりまんのか?裁判に訴えても、登録証はもらいまっせ…」と詰め寄る場面を目にすることも決して少なくありません。このときの登録会場は関西の某県でしたが、私の地元九州の方のためにこれを九州弁(博多弁)に翻訳いたしますと、「あんた、なんばゆうとっと?これはじっちゃんが満州で生死をともにした刀ばい。これが日本刀じゃなかけんゆうならなんちゅうと?きさんにじっちゃんの苦労がわかると?おいは裁判に訴えても登録証ばもらうけんね」となります。じっちゃんの苦労と登録証は何の関係もありません。また裁判に訴えても無駄なことです。審査員複数が日本刀でないと判断したら、日本国中のどこの裁判所にいっても通りません。もちろん訴えることは自由ですから、教育委員会は止めはしませんが…。

最後に一番大事なことですが、友人間で売買するときは、買う前に必ず登録証が本物かどうかを、各県教育委員会に確認してください。電話で登録番号や寸法銘文などを言うと、教育委員会の方が台帳と合致しているか教えてくれます。もう一つ大事なことは、登録証の内容と現物の寸法が合致しているかを自身で計って確認してください。偽物登録証は銘文が合っていても寸法が違うことが多いからです。なぜここまでしつこく言うかというと、それほど登録証の偽物も多いからです。刀剣店は登録証を確認していますので、刀剣店で買うのは登録証に関しては安心です(刀が正真かは別問題)。

登録証制度のことや内容を述べてまいりましたが、再発行などについては後日アップしてまいります。
登録のことでご質問がありましたらお気軽に当店にご質問ください。
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価格や相場について

よく骨董の値段は、あってないようなものと言われる方もおりますが、そんなことはありません。
価格や相場というものは歴然として存在します。
勉強していない人や、生兵法の人がそう言うのです。とくに日本刀は他の骨董品と比較しても、値段の設定がわりとはっきりしている方だと思います。

価格や相場ということについて

例えば、この刀工のこのくらいの作域だと○○円程度などと表現されます。もう少し詳しく言うと、Aという刀工の高水準の出来の刀が300万円とすると、それから減点法で査定していきます。A刀工の真骨頂は乱刃であるので直刃だったらマイナス○○円、それに若干、地に疲れがあるのでマイナス○○円、錆などを総合判断して230万円といった具合にです。このように同じ刀工、同じ長さの刀でも、各ファクターによって値段は相当の開きが出てしまうのです。鑑定評価に刀を持ち込まれた方の中には、刀工辞典(各刀工の値段が記された資料)を持参される方もおられますが、この辞典の中の価格というのは、刀工の位列を表しているに過ぎません。わかりやすくいえば、〜円ではなく〜度と読み直すとよいと思います。例えば助廣が1,000万円であれば1,000万度、忠吉が700万円であれば700万度と読み直すのです。どのような価格付き辞典でも忠吉が助廣を追い越していることはありません。これが位列というものなのです。もちろん忠吉の最高傑作が、助廣の凡作を凌駕するのは当然ですが、最高傑作同士の対決であれば、結果が言を俟たないことは無論です。

現在刀の価格は史上最低値といっても過言ではないため、売却時には涙が出るような査定額となりますが、購入するには最高の環境と申せましょう。これは、刀の価格といえども、社会の経済状況と密接に連携しているからです。バブル前後には、新刀重要であればだいたい1,000万円が相場でしたが、現在は500万円を切るケースも珍しくありません。無銘重要であればなおさらです。お金があれば、買うには本当に最高の時代ですが、悲しいかなユーザーの皆様の懐具合も、社会の経済状況と密接に連携しているから厳しいものがあります。

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買取価格、オークション価格について

買い取り価格、オークション価格について
美術品を購入する際は、売却時のこともよく考えて、品物を吟味しなければなりません。
日本刀に魅せられはじめた頃というのは、とかくあせり(今買わないとこういう掘り出し物にはもう出会えないのではないか?)があったり、刀剣店に行ってカッコつけて(一通りの知識を見せて)、気前よく買ったりする方がおりますが、だいたい失敗します。

買い取り価格、オークション価格について
失敗というのはなにも偽物を掴まされるということだけではなく、正真物でも本筋品でなかったり(工房作品)、荒れがひどい作品、また作品と価格との間尺が合わなかったり(作品の状態に比して価格が異常に高い)も含まれます。荒れがひどいというのは、見えない瑕疵がやっかいだということです。フクレ予備軍や、刃がないのに刃を描いている、追い鏨、その他いろいろありますが、ここには書き切れないので、項を後日に譲るとして、このような瑕疵は所謂素人にはほとんどわかりません。

とにかく、わからないことはわからないと言って、徹底的に納得するまで買ってはいけません。私はお客様によく言うのですが、50万円の中古車を買うときのことを考えてくださいと。たかだか50万円の中古車を買うにしても、きっとエンジンの調子はどうか?走行距離は何キロメートルか?タイミングベルトは替えているか?車の現状と価格は合っているか?その他徹底的に調べるはずです。それでも即断はしないで家に帰ってじっくり考えることでしょう。

しかし不思議と刀(古美術品)は大した知識もないのに、高額商品を案外その場で買ってしまいます。店主大喜びヤッタヤッタ…不思議な世界です。失敗した刀というのは、売るときは買った値段に比して、何分の1以下です。ひどいときは10分の1以下ということもあります。だからといってこれがひどいということではなく(買った当人にとってはひどい話ですが)、もともとそんな評価の刀だったということです。そして、得てしてこういうものを売る店に限って、引き取りを拒否します。買取を約束(自社や同業のオークション出品も含めて)してくれる店が良い店のバロメータの一つです。

買い取り価格、オークション価格について
日本には、刀は何百万本もあります。何を慌てることがありましょうか?じっくり勉強してからでも十分間に合います。失敗原因の大半は、良いものを安く買おうという「掘り出し根性」にあります。掘り出し物というのは、絶対にないとは言い切れませんが、確率は1000分の1以下です。万が一、友人にそういう幸運な人がおられたとしても、あなたはその確率に賭けてはいけません。そして失敗しない最後の砦は、信用ある店を選ぶということに尽きます。信用というのは、「一等地にこんな立派な看板をあげてやっているのだから、大丈夫だろう」ではありません。何回も店に通って、店主や店員の人柄、教育などを見極めて決断してください。

買取ということですが、前述したように刀は美術品であり、それが持つ経済的な価値は相当なものがあります。
刀を所持して楽しんだ然る後に売却、あるいは、急なお金の工面で売りたいということもあるでしょう。そのときに悔しい思いをしないためにも前述したことを参考にしてください。買う店を間違えなかったら、必ず換金に応じてくれます。
しかしいくら優良店でも、楽しんだ分の差額減は当然のことです。一般的には、買ったときと売るときの社会的な経済状況変化(景気が悪くなった)がなければ、買った価格の60%〜80%というところでしょうか?しかし現在は最低の経済状況です。買取は、あくまで買取現時点の相場を基準にするということです。ですから20年前に200万円で買った刀の現在の買取価格はものにもよりますが、50万円から70万円かもしれません(あくまで一例)。これは別に店が悪いのではなく、社会的な経済状況がそうなったということです。

逆に経済状況がよくなれば、買ったとき以上に高く売れることもあります(バブル以前に買ったものがバブル期に倍で売れたということもあった)。しかし今後はなかなか難しいとは思いますが…。
ものがしっかりしていて売り急ぎしなければ、現在でも一定の価格で手放すことはできると思います。委託販売やオークション、業者の会に出してもらうなどの方法です。急ぎの買取となると、いくら優良店でも買取価格は下がってしまいます。これは世の常です。いずれにしても買う店を間違えなければ必ず相談に乗ってもらえますので、買うときには手放すときのことも十分相談してください。
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